・花形役者との邂逅

ササライ「おや、こんばんは。ハルモニアには何用で?」
ロイ「ん?んー…?ああ、病院の先生か。なあ、あんたってササライ先生?ルック先生?」
ササライ「……もの凄く久し振りにされましたよその質問。幼いころはしょっちゅう間違えられましたけど、今は雰囲気が大分違いますからね。顔は同じですけど」
ロイ「んなこと言われても俺はあんたたちとロクに面識ねえしよ……。で、どっち?」
ササライ「ああ、失礼しました、僕はササライです。日常的に不機嫌な方がルックですよ」
ロイ「どうなんだその紹介の仕方。……えーっと、ルック先生はどこにいるかわかるか?」
ササライ「ルックならまだ外科病棟にいると思いますが……。どうしたんですか?」
ロイ「や、なんかうちの社長が『名案が浮かんだ!ちょっとこれからハルモニアの外科部長に会ってくるね!』っつって飛び出していったらしくって。リオンが出掛けてるから俺が迎えに来たんだよ」
ササライ「スターが社長を迎えに来るってどうなんですか」
ロイ「それがファレナだ。……まあいいや、外科病棟ってどっちだ?」
ササライ「向こうですが……ロイさん、お茶でもしていきませんか。すぐに回収したらつまらないでしょう、僕が」
ロイ「ろくでもない兄だな。王子さんが気に入るだけのことはある」


***


・再☆ファレナ芸能の華麗なる勧誘

王子「こんばんは、僕だよ!月が綺麗ですね!」
ルック「……わたし死んでもいいわ、を期待しているなら先に伝えておくよ。死んでも言わない」
王子「素晴らしい返しだねルックくん!ファレナにこないかい?」
ルック「断る。大体不可侵条約はどうしたのさ。あれが出来た時僕は初めてヒクサクを尊敬したんだけど」
王子「僕は家族愛を含めあらゆる愛を応援するよ!ぶっちゃけ家族愛が一番麗しいよね、僕とリムのように!」
ルック「ねえ、帰って」
王子「ツン期かい?だが断る!君ならササライくんと組んで双子アイドルにもなれるし、外科でビジュアル系バンド・HAKAISHAを組むことだってできる!まさに逸材だよ!」
ルック「切り裂くよ?」
王子「既に決め台詞まであるときた!完璧だね!」
ルック「嫌だって!不可侵条約を思い出してよ!」
王子「あれは確かにファレナ=ハルモニア間の人材の引き抜きを制限したものだけど、本人が強く望むなら構わないらしいよ?だからあとは君がパパにおねだりすればいいだけだ!」
ルック「死んでよもう。穴だらけじゃないか馬鹿親父!」
王子「駄目だよルックくん、父親は敬わなければ。彼らはいつ消し炭になったり魚人になったりするかわからないんだから。ね……?」
ルック「あんたんとこと一緒にするな!多分まだ鉄甲騎馬の方が近いよ奴なら!」
王子「それはそれでどうなんだろうと僕は思う」



ルック「ちゃんと聞いてよ、僕はあんたが嫌いだ。そしてファレナも嫌いだ」
王子「!! 君の気持ちはよくわかったよルックくん!僕とはすなわちファレナ、ファレナとはすなわち僕。つまり今の君の台詞は二重否定であり、マイナスかけるマイナスはプラスであるからして、君は僕が大好きであると!これが君流のツンデレ法だね、ロードレイク養成学校に通う必要はないようだ!」
ルック「……わかった、理解した。あんたとは言語体系が違うということを忘れていた僕のミスだ。つまりこう言えばいいんだろ、フェンならくれてやるから僕は諦めて」
王子「え、フェンくれるの?でもあの子、最近僕を避けるんだよなあ……。昔はおにいちゃんおんぶー、とか言って懐いてたのに。年月って、残酷だね……」
ルック「誰が言ったかボケ、と奴なら言うだろうけど残念ながら僕も見覚えがあるよその場面。まあ、だから僕が売ってやるって。明日フェンと会う約束があるんだけど、あんたが代わりに行って良いよ。そして煮るなり焼くなり祝言をあげさせるなり好きにすれば良い」
王子「ありがとうルックくん流石だよ!わかった今回は君を諦めよう!でもフェンはまだ16だから結婚できないんだ……。彼の18の誕生日に結婚式を挙げさせるから予定はあけといてね!相手はそれまでに見つくろうよ!」
ルック「わかった何なら普段は結婚式に使わないハルモニア大聖堂を貸してやっても構わない。だから今後も僕に構わないでお願いだから」
王子「一生の?」
ルック「やっぱり死んでよ」
王子「困ったな、君と誰を押せばいいのかわからない!元彼でもお兄さんでも父君でも、なんだったらお師匠さまでも構わないから選んでくれ!」
ルック「セラ、メス」
セラ「はいルックさま!」





ササライさまよりルック先生の方が王子との相性が良かった。悪い方向に。