※トランと同盟を結ぶため一行はグレッグミンスターに向かっています※
1.バナーの峠
ナナミ「わたし、ハイランドと都市同盟以外の国に行くの初めて!トランってどんなとこ?」
アス「ルックは詳しいでしょ?」
ルック「さあね。トランになってからは数えるほどしか行ったことないよ」
シーナ「ああ、たまーにおまえ来てたよな。あれだろ、お師匠さんのおつかいで」
アス「ルックがおつかい……!」
ルック「………シーナ、ちゃんとレパントに言ってやった?居住地=ダンジョンの認識は誤りだから大統領官邸と中央官庁に機械兵は放つなって」
シーナ「ちょ、」
ナナミ「なになに、トランには機械の兵隊さんがいるの?ハイテクだね!」
シーナ「いないから!確かにうちの実家はちょっとアレだけど、流石に首都でそれはない!」
ルック「あの家がちょっと・アレ。田舎だからで済まされる程度じゃないよ」
アス「シーナの実家に何があったの?」
ルック「主君を裏切って、出会って早々の解放軍軍主にほいほいついてった男が二人」
アス「え……人望ないってこと?その人が大統領なんでしょ?トランって大丈夫?」
シーナ「現在進行形でドンパチやってる国に心配されるようなことは何もない。つかルック、おまえは俺んちに恨みでもあるのか」
ルック「別に?ルーレットに散々付き合わされた挙句、竜印香炉が当たらないのは僕の運が悪いせいだって八つ当たりされた思い出があるくらいだよ」
シーナ「それはうちじゃなくてフェンを恨めよ!」
***
2.中央官庁
アス「……ねえシーナ」
シーナ「ん?」
アス「確か、グレッグミンスターのお城って崩れたんじゃなかったっけ?」
シーナ「崩れたぜ?フリックとビクトールが生き埋めになった」
フリック「なってない!!」
アス「それはどうでもいいんだけど……。なんでもっかい建てちゃったの?」
シーナ「え……それはまあ、うっかり……」
アス「うっかりじゃ済まされないミスだよ!なんで倒した国の象徴を建て直すのさ!!」
シーナ「……モース(建設大臣)に聞けよ」
アス「責任転嫁!」
ナナミ「アス、そんなことより機械の兵隊探そうよ〜」
シーナ「いないから!」
***
3.英雄の間
アレン「ああ、あなたがアスさまですね。ようこそトランへ」
グレンシール「過去の遺恨は忘れて共に戦いましょう。我々は首都警備の仕事があるためお供はできませんが…」
アス「いえ、ありがとうございます。……ところで、ここは一体?」
アレン「…………」
グレンシール「…………」
シーナ「…まあ、それはおいといて……」
アス「おいとかないよ!なにこの部屋!銅像ってなにさ、レプリカって何事!」
シーナ「いや、まあ……」
アス「ここもレパントさんが造ったの!?何なのあの人!僕、リドリーがこんなことしたら末代まで呪うよ!?」
アレン「まあ、これがトラン流ですから……」
シーナ「なんつうまとめ方を!」
アス「僕、もう、トランなんて信用できない……っ!」
グレンシール「結んだばかりの同盟にもうヒビが……!」
***
4.訓練所
バレリア「これはシーナ殿にルック殿、ようこそいらっしゃいました。……皆の者、よく聞け!魔防の低い者、それから女性は今すぐに退避しろ!時に退却は罪でも恥でもない、必要な場合を見誤るな!!」
アス「うわあ凄まじい歓迎の仕方!」
ルック「ちょっとバレリア、なにその軟弱な態度。切り裂くよ?」
シーナ「自分ひとりが残るなんて、フラグのつもりか?俺は年上も好みだぜ……?」
アス「うん、二人とも、フォローのしようもないね!」
***
5.墓地
シーナ「ここはな……解放戦争で死んでいった奴の墓場なんだ」
アス「そっか…たくさん人が亡くなったんだね…」
シーナ「まあな、それが戦争だ。……で、そこにあるのがフリックとビクトールの墓」
フリック「俺!?」
シーナ「反対する奴もいたけどな、あの状況だったから。マッシュと一緒にそれはもう盛大に弔った」
フリック「だから道行く人の目線が痛かったのか…!」
ビッキー「フリックさんはもともと普段から痛い目で見られてるよね!」
フリック「ビッキーに言われた!」
シーナ「あーあ…なんとなく、ビッキーに言われたらおしまいだよな…」
ルック「……どうでもいいけどさ、ほっといていいの?そこであんたたちの墓に花供えてる姉弟」
フリック「!!」
***
6.市街地
クレオ「おや、シーナくんじゃないか。ルックくんも久し振り」
シーナ「あ、クレオさん!」
クレオ「みない顔だけど、そちらは?」
アス「アスといいます!お姉さん、美人ですね!」
シーナ「ちょ、俺の十八番を……!」
クレオ「ふふふ……。君はなんだか、うちの坊ちゃんに似ているね」
シーナ「え、マジで!?あいつクレオさん口説いたの!?」
***
7.大統領官邸
ジョバンニ「おや、シーナ坊ちゃんじゃないですか。おかえりなさい」
アス「シーナ坊ちゃん……!」
シーナ「黙れリオウ」
ジョバンニ「ルックさんとビッキーさんも、お久しぶりです。そちらの方はお友達ですか?」
テスラ「ジョバンニさん、彼らは都市同盟の方々ですよ。客人として迎えるようにと、大統領が」
ジョバンニ「そうでしたか、それは失礼。私はこの家の執事をしております、ジョバンニと申します。コソ泥ではありません」
アス「え、なにその自己紹介」
シーナ「ジョバンニ、おまえまだクリンと同列に扱われたこと根に持ってんのか」
ジョバンニ「持たないとでもお思いですか」
アス「クリンって誰?」
ビッキー「わたしも知らないよ?」
ルック「あんたのは忘れてるだけだろ。……前の地賊星」
アス「地属性……?」
ルック「違うから。いやそうだったかもしれないけど……。君の宿星で言えば、ホイ」
アス「それは御愁傷様ですジョバンニさん!」
***
8.大統領官邸・その2
ジョバンニ「では皆さんにお部屋の支度をしなくては。すみませんね、少々お時間を頂きます」
ルック「僕は良い。シーナの部屋で充分だ」
ジョバンニ・フリック「……え?」
ルック「……今不快な想像をした奴はいっぺん死んでから出直してきて。言っておくけど、シーナは床だ」
シーナ「せめてソファでなく!?」
ルック「ソファはアスだろ。おこがましいこと言うんじゃないよ」
アス「うわあ。頼んでもいないのに僕を数にいれたルックのデレを喜べばいいのか、軍主を差し置いてベッドに寝ようとする兵団長を責めればいいのか」
フリック「はは。ルックも丸くなったもんだな」
ルック「ビッキー。フリックは女風呂に行きたいそうだ、今すぐに」
ビッキー「うんいいよ!えへへ、フリックさんったらすけべだなあ」
フリック「読めよ!空気をとは言わないから会話の流れを!」
アス「それはビッキーには難しい注文だね…」
ビッキー「いっくよ〜、そおれっ!」
***
9.シーナの部屋
アス「へー、意外に広いんだね」
シーナ「これでも大統領子息ですからね〜」
アス「そうだよねー。全然そうは見えなくても」
シーナ「このやろう…。つか、おいルック。勝手に酒をあけるな」
ルック「あんたの部屋にきたら一番高い酒を開けるのが礼儀だろう」
シーナ「初めて聞いたぞそんな礼!」
アス「僕も僕も〜。シュウがいると迂闊に呑めなくてさあ」
アレン「(バタンッ)……ああいたシーナ殿!大変です来てください!」
シーナ「え、なに?」
アレン「それが…アイリーン殿の入浴中にフリック殿が突然現れたとかで……。頭から落ちてきたフリック殿は当然血塗れ。不憫に思ったアイリーン殿が人を呼びに出たところ、大統領に遭遇。怒髪天の大統領は剣を抜き、フリック殿はもはや虫の息。シーナ殿、騒ぎを治めろなどとは言いません、どうかあなたの父上が殺人罪を犯す前に殴り倒してくれませんか……!」
シーナ「あらゆるものがどうしようもない……!(とりあえず出ていく)」
アス「…………」
ルック「…………」
アス「これが、トランかあ……」
ルック「まあ…レパントの治める国だからね…」
アス「否定しないんだ!」