「犯行声明です」
東方司令部。生真面目な顔で告げるホークアイに、ロイはうんざりと返す。
「またか?」
「ええ、今度は大佐を御指名で」
「やれやれ。どうせ指名なら若い女性に頂きたいものだ」
「大佐、人気取りもいい加減にしてくださいよー」
「また残業スか?」
「そうなるわね。場所はサヴァンズ。車で飛ばして2時間ってところかしら」
「差出人は?」
「ランドルフ・モーガン。個人名ですが、おそらく複数犯でしょう」
「ランドルフ・モーガン…?聞いたことがあるな。ファルマン、知っているか?」
「イシュヴァール後すぐに退役した軍人ですね。反戦派で有名だったようです。確か大佐と同い年かと」
「そうか…」
「街中に爆弾を仕掛けたようですね。それから人質も」
「確実か?」
「ここ1週間で6件の捜索願が出されていますから、おそらく」
「面倒だな」
「大佐!」
突然駆け込んで来た鎧に目を見張る。同時にロイは最近のエドワードの電話連絡を思い出す。確か錬金術師の図書館に調査に行くと言っていなかったか?
「どうしたアルフォンス。一人か?鋼のは?」
「その兄さんがいなくなっちゃったんです!」
「はあ?」
切羽詰まったように叫ぶアルフォンスに、大人たちは顔を見合わせた。
アルフォンス曰く。食事をさせるために追い出した兄がなかなか戻って来ず、図書館で閉館まで待ったあと宿に戻ってみたら、部屋に残されていたのは1枚のメモ。慌てて宿屋の主人に尋ねてみたところ、昼過ぎに若い男と二人で出て行ったと言う。メモには東方司令部に行けとあったが、既に夜。交通機関は止まっていたので歩けるところまで歩き、夜が明けてから電車に乗ってやって来たのだそうだ。
「東方司令部に?」
「いや、正確には大佐を訪ねろと…」
「メモにはなんと書いてあったんだね?」
「ええと…怒らないでくださいね?」
「怒るような内容なのかね」
「…『スマン急用!あの馬鹿によろしく!』だそうで……」
「…………」
皆の視線が集中する。ロイは溜息を吐いた。
「…それを私だと解釈した訳だね」
「え、いやあのっ、ボクがそう思ってるとかじゃなくて、兄さんがそう呼ぶのは大佐しかいないのでっ!」
「アル、フォローになってねえよ」
ハボックがにやけながら茶々を入れた。睨みつけて黙らせる。
「まったく…。それで君たちがいた場所はどこだって?」
「あ、サヴァンズです」
「………サヴァンズ?」
あのトラブルメーカーめ。ロイは悪態を吐いた。弟と鷹の眼が恐ろしいので心の中で。
「とりあえずハボック、サヴァンズへ向かえ。詳しいことがわかり次第指示を出す。フュリーは無線機の準備を」
「アイサー」
「ファルマンとブレダはサヴァンズの地図から爆破されそうな場所を探し出せ。反戦派のやることだ、人気のない所だろう。中尉はモーガンに関する資料を掻き集めろ」
「了解」
「大佐、ボクは…」
「どうしたい?」
「ハボック少尉に同行してもいいでしょうか」
「…わかった。危なくなったら逃げなさい」
「ありがとうございます!」
この素直さを見習え鋼の。厄介な子供に溜息を吐いた。